岡田暁生『西洋音楽史―「クラシック」の黄昏』

西洋音楽史―「クラシック」の黄昏 (中公新書)

西洋音楽史―「クラシック」の黄昏 (中公新書)

クラシック音楽」の流れをヨーロッパの政治、社会、文化のコンテクストに位置づけて分かりやすく解説した、一筆書きの通史。もう一突っ込みあったらいいなと思う部分はいろいろとあるけど、新書には無いものねだりだろう。面白く、読みやすい。


プレビュー:2005-11-24


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はてなの書評から。


2005-10-31(すみません、ただのメモなのに誤ってトラバ飛ばしてしまいました。)

通読して、これは、音楽を「見るように聞く」本だと思いました。
(略)
「比喩」として、説明をわかりやすくするために図像が挿入されているというのではなくて、すべての叙述が一枚の絵、イラストに収斂するというのに近い感じ。

図像こそが文章の「オチ・まとめ」であり、図像を出すことによって、音楽が、文字通り「像を結ぶ」、そういう本だなあと思いました。

もうひとつ、この本を読んで思ったのは、この本の「私」が、物事を断じて「構造化」しない人だということです。
(略)
歴史を一望できる「特等席」からみた風景を、全体の「形式」や、遠景(中世とルネサンス)・中景(バロックと古典派)との距離感、前景(19世紀)の人物の表情やしぐさまで、きれいに活写するけれど、舞台の裏に回って、この眺望を成り立たせている「しくみ」をのぞく、というようなことはしない(だから、「楽屋落ち」的な裏話がないと息が詰まる、というタイプの人には、例えば渡辺裕氏の本などに比べて、読み通すのが辛いかもしれません)。その姿勢を通している点で、「私の音楽史」は、見事な人文科学(「精神の貴族」の書)だと思います。

以下は批判的言及。


http://d.hatena.ne.jp/./nem_ran/20051101#p2
(全般的に評価しつつ)

ただし、専門外の時代についてはちょっと突っ込みたくなる記述やら、参考音源・文献として挙げているものには首をかしげたくなるものもあり(バッハの管弦楽組曲の音盤にカザルスを挙げるのはどうか)、著者の好みが少々出すぎではないかという箇所も(バッハ、現代音楽が苦手のようだ)。


図式的な、あまりに図式的な - 一本足の蛸

西洋音楽千数百年の歴史を新書一冊で語るのだから、例外や特殊事例を大幅にカットした記述にならざるを得ないのは当然のことで、それに文句を言っても仕方がないのだけれど、さすがに「ブランデンブルク協奏曲」が合奏協奏曲だ*1などと言われてしまうと、もう駄目。読み進められない。

著者の前著『オペラの運命』がまた極めて面白かった。



しかし、面白かった面白かったって、小学生の読書感想文かよ…。



(26日追記)
西洋音楽史』の植村先生による紹介:2005-12-25, 2005-12-26, 2005-12-27